ノンタイトル
夢を見ているという自覚があった。
晴天の空を泳いだり、緑が覆い茂る山を超えて、幼い頃に行った祖父母の家まで飛んでいける。
まるで風と一体化した気分だ。
これは夢以外にない。案外に気持ちがいい。
そうして、祖父母の家に降り立つ。
瞬きの瞬間に家の門前から、蔵へと意識が変わった。
耳から入る声に気を取られる。
「ねぇねぇ、このほんしってる?」
この声は、小さいときのいとこのしーちゃん。
「ううん、しらないよ?でも、おばーちゃんがクラのものにはさわっちゃダメっていってたよ」
困ったような声を出しているのは、わたしの幼い頃だ。
「だいじょうぶだよ!ほら」
しーちゃんが本を開く。
わたしの意識は、天井へとずれて、本を挟んでいる二人の脳天が映る。
「えーっと、…えーとー」
しーちゃんが本の文章を読もうとする。
「しーちゃん!おばあちゃんにおこられるよぉ!」
」
幼いわたしはしーちゃんが広げた大きな本を閉じようとした。
「だいじょうぶだよ!あとでもとにもどすよ!」
しーちゃんとわたしがもみ合いになる。自分達の半分くらいの本を振り回せば、どちらかが傷付くのも知らずに。
「いたっ!!」
小さいわたしが先に声を上げた。場の空気に馴染んでいるわたしは、小さいわたしの見ている小さな指に注目していた。
「う、うわあああん!!いたい、いたいよぅ!」
何本かの小さな指、第一間接にそって傷口になっている。
紙で切ったのだった。
しーちゃんが取られまいとして抱えた本。開かれていたページの端には真っ赤な血がついていた。
鋭い痛みだったのだろう。
わんわんと泣いている声が蔵中に響く。しーちゃんが慌てて、駆け寄って来た。
「ごめん、なさい。ごめんなさいごめんなさい!」
段々としーちゃん自身も泣き出して蔵の中は二人の泣き声が埋めていた。
晴天の空を泳いだり、緑が覆い茂る山を超えて、幼い頃に行った祖父母の家まで飛んでいける。
まるで風と一体化した気分だ。
これは夢以外にない。案外に気持ちがいい。
そうして、祖父母の家に降り立つ。
瞬きの瞬間に家の門前から、蔵へと意識が変わった。
耳から入る声に気を取られる。
「ねぇねぇ、このほんしってる?」
この声は、小さいときのいとこのしーちゃん。
「ううん、しらないよ?でも、おばーちゃんがクラのものにはさわっちゃダメっていってたよ」
困ったような声を出しているのは、わたしの幼い頃だ。
「だいじょうぶだよ!ほら」
しーちゃんが本を開く。
わたしの意識は、天井へとずれて、本を挟んでいる二人の脳天が映る。
「えーっと、…えーとー」
しーちゃんが本の文章を読もうとする。
「しーちゃん!おばあちゃんにおこられるよぉ!」
」
幼いわたしはしーちゃんが広げた大きな本を閉じようとした。
「だいじょうぶだよ!あとでもとにもどすよ!」
しーちゃんとわたしがもみ合いになる。自分達の半分くらいの本を振り回せば、どちらかが傷付くのも知らずに。
「いたっ!!」
小さいわたしが先に声を上げた。場の空気に馴染んでいるわたしは、小さいわたしの見ている小さな指に注目していた。
「う、うわあああん!!いたい、いたいよぅ!」
何本かの小さな指、第一間接にそって傷口になっている。
紙で切ったのだった。
しーちゃんが取られまいとして抱えた本。開かれていたページの端には真っ赤な血がついていた。
鋭い痛みだったのだろう。
わんわんと泣いている声が蔵中に響く。しーちゃんが慌てて、駆け寄って来た。
「ごめん、なさい。ごめんなさいごめんなさい!」
段々としーちゃん自身も泣き出して蔵の中は二人の泣き声が埋めていた。
コメントを書く...
Comments